車輪を発明する

ファーマコメトリクス・モデリング研究所

「良い」共変量モデルとは

「良い」共変量モデルとはどういうものだろうか。それはもちろん、モデルの使用目的による。
たいていの場合、そのモデルを用いて何らかの予測がしたいはずだ。母集団での分布を予測したい。ある特定の患者の予測をしたい。
その目的をはっきりさせてからモデル構築に入りたい。

本来モデルに取り込むべき共変量を入れなかった場合の影響。
(こんなことって、どういう場合にあるのだろうか。例数が少ないせいでの検出力不足。少数の外れ個体のために本来の効果がマスクされてしまった)

その(半ば)逆に、ギリギリ有意な影響の共変量をモデルに取り込んだ場合に何が起こるか。
しかしたいていの場合、このときの共変量の影響のパラメータ(例えばべき係数)は帰無仮説の値に近いはずだ。しかし、p 値で見るとギリギリ有意になっている、という場合である。有意だけれども臨床的には意味がない、としてその効果は取り入れないのが通例だ。
そのためには、モデルに取り込むための基準として統計的有意性だけでなく、影響の大きさ、を事前に定義しておく必要がある。

要は、曝露の許容範囲内に入るか、それを出てしまうか、だ。これはモデル構築の段階から意識すべきである。有意であっても、影響が小さく曝露量の許容範囲を超えないならばその共変量はモデルに組み込む必要はない。
曝露量の許容範囲がすでにわかっていることが大前提である。有効濃度域、あるいは副作用域、といってもよい。そもそも、それらがわかっていないのに PK/PD 解析をする意味はない。
あるいはせめて、こういう状況は考えられる。例えば、海外ですでに使用されていてそれを日本でも使いたい。あるいは、成人で使われている薬の小児適用を考えたい、という場合である。いずれの場合であっても、有効に使われている場合の濃度の範囲、あるいは、副作用が出ていない濃度の範囲がわかっている。いや明確に「わかって」はいないかもしれないが、少なくとも、そのような場合にはこういう濃度であった、というデータがある、という状況だ。それならば、そのような濃度範囲を仮に「有効濃度域」あるいは「目標濃度域」と考えればよい。
いずれにしても、目標とする範囲が事前に与えられていること、が大前提だ。

バイアスと分散のトレードオフ過学習の観点からも考えることができる。

ただし、コンパートメント数の選択なら話はもう少し簡単。グラフを描いてもわかりやすい。
本来 2-compartment のところを 1-compartment model を当てはめると、当然、当てはまりは悪い。しかし、パラメータ推定値そのものは精度が良い場合もある。すなわち、精度良く求まっていることと、当てはまりが良いこととは別なのだ。
Bonate の本に書いてあった。

Pharmacokinetic-Pharmacodynamic Modeling and Simulation (English Edition)

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